偽ブランド品を販売すると商標法違反となるのは知られているところだと思いますが、これに加えて詐欺罪となるケースもあります。
すなわち、商標法違反の罪は、商標権侵害物品を販売等する行為や商標権侵害物品を譲渡目的で所持等する行為が犯罪行為となりますが、さらに、偽物(商標権侵害品)をあたかも本物であると偽って販売していたようなケースでは人を欺いた罪である詐欺罪にも該当する場合があります。
商標法違反に加えて詐欺罪も成立するようなケースでは、犯行態様がより悪質であるとして逮捕されるリスクがあがります。ご家族が商標法違反で逮捕された、また、商標法違反で自宅や会社に捜索が入ったというような場合、まずは弁護士へご相談されたほうがよいです。
商標法違反と詐欺罪の違いについて以下でもう少し説明させていただきます。
商標法違反と詐欺罪の違い
偽ブランド品(商標権侵害品、商標法違反物品)であることを明示して販売していた場合、購入者においては偽ブランドであることを認識して購入することになるため、誰かを騙して販売しているということにはならず、購入者側も騙されていませんので、詐欺罪には該当しませんが、商標法違反の罪は逃れられません。たとえば、「●●風」とか、「●●のような柄」(●●はブランド名)などと記載したり、本物ではないことを暗示して販売している場合、偽物と表示して販売していることになるから商標法違反にもならないのではないか、と考えるのは間違いです。商標法違反は、偽物と表示することで消費者を騙していない場合でも、偽物とわかりながら販売しているだけで適用される罪となります。
他方で、商標法違反物品であることを知りながら、あたかも本物であるかのように装って偽ブランド品を販売すれば、消費者を欺き、消費者においてそれが本物であると誤認させ、消費者から金銭を得ているため、商標法違反に加えて、立派な詐欺罪が成立します。
このような違いがでるのは、商標法違反罪と詐欺罪は保護する法益が違うからです。商標法違反の被害者はブランド会社(商標権者)であり、商標権者が積み上げてきたブランド価値を棄損させる行為を処罰し、ブランドの財産的損害に対する処罰規定です。他方で、詐欺罪の被害者は、商標法違反している偽物を購入した者になり、被害者の財産的損害に対する処罰規定です。詐欺罪が成立するには騙す意図が必要であり、かつ、被害者側も騙されている(錯誤)ことが必要となります。
以上のように事案によっては、商標法違反と詐欺罪は重複して適用されることもありますし、商標法違反だけが適用されることもあります。もちろん、商標法違反に加えて詐欺罪も成立する場合のほうが罪が重く、悪質であるとして、商標法違反及び詐欺を理由に、逮捕される可能性がかなりあがります。
商標法違反と詐欺罪への対応
詐欺罪については、弁護士に依頼して、商標法違反物品の購入者に対して弁護士を通じて被害弁償等を行うことができれば、起訴猶予になったり、起訴された場合でも被害弁償の事実を弁護士が法廷で明らかとすれば、罪を軽減する大きな要素となります。これは人の財産に関する犯罪の特質であり、被害弁償により被害者側の被害感情も収まることもあります。詐欺罪で事件が進んでいる場合は、一般的に高額商品であることが多く、高額商品を買わされているため、完全な被害弁償がなされない限り、被害者側の被害感情が消えないことが多いです。
他方、商標法違反については、こちらも一種の財産犯ですので、弁護士を通じて被害弁償をすれば同様の効果が得られるとも考えられますが、ブランド毀損については被害額の算定が難しく、また、ブランド価値が毀損されたブランド側としては被害弁償を拒否したりすることもあり、さらには法人であり被害感情を観念しにくいところがあり、被害弁償が進まないことが多いです。
商標法違反や詐欺についての被害弁償については被疑者となった方が個人で行うのは困難です。詐欺の場合には被害者側は騙されているわけですから被害感情が激しく、弁護士なしで直接コンタクトを取ることは困難を極め、また、商標法違反という点でもブランドは大企業が多く、弁護士を介さず被疑者自身が被害弁償の申し入れをすることもなかなか難しいのが現実かと思われます。
刑事事件として進行している場合は勿論、その前段階で弁護士が受任し、弁護士が被害弁償を代理して行うことで、逮捕されることを防いだり、商標法違反や詐欺罪での正式起訴を防いだり、刑事事件となることを防ぐことができる場合がありますので、弁護士への早期相談をおすすめします。商標法違反に関する刑事事件や弁護活動の概要については「商標法違反の手続と弁護活動」をご参照ください。
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